院長は歯大工
歯大工と言う言葉を初めて聞いたのは歯学部在籍4年目の小児歯科の実習の時である。小児歯科の実習の時に講師の先生に『歯医者にとって大切なのはなんだと思います?昔は歯大工と呼ばれていた』と言われ私は『嫌がられない人柄と手の器用さは必要だと思います。』と答えたら、講師の先生が少し考えて、うなずいていたのを憶えている。私は歯大工と言う名称を器用さが必要な仕事と捉えたのだが、そうでない方もいるようだ。
ネットで『歯大工』を調べてみた。年配の歯科医師が、若い歯科医師へ向け、『歯科医の仕事は大工仕事と違うのだ。歯大工と言われないようにしろ、』と書いてある忠告を見つけた時には、さすがにそれは大工に失礼だろう、と少しムッとした。そして、そのブログ記事を読み進むと『歯科医師の仕事には診断が必要である。ルーチンで仕事をしてはいけない』ということを言いたかったのが判った。と、同時にそのブログを書いた歯科医師の浅はかな料簡に呆れた。
なんといっても、大工仕事をルーチンな仕事と引き合いに出すところは、誤りだと思う。単純な大工仕事もその場その場の状況、材質、道具によって慎重で適正な判断が必要となる、歯科医師にとっての臨床や診断と変わりがないのではないか?
大工と言っても多種多様である。船大工、宮大工、家大工、(歯大工も入れたい)とあるが、指物職人、建具屋さんも大工の部類に入れられる。各種大工の中でもピンとキリがある。どんな職業でも上位5%は所謂デキル人。下位5パーセントは下手、場合によっては危険と言われる。
インプラントはネジを顎骨に埋め込む仕事である。それ自体、難しくない。ルーチンな仕事ではないが単純な仕事である。これを高度な治療と主張する歯科医師が存在する。彼等は相当不器用な人物と疑われても無理はない。そこでのインプラント治療は危険かもしれない。
私は、患者には自分は歯大工だと公言している。私の診療は大部分が単純な大工仕事だからである。削ったり、ネジを入れたり、隙間を埋めたりと、手作業は大工仕事と変わりがない。補綴(入れ歯、歯の被せ物)、インプラント、はまさに大工仕事である。
ちなみに、私は歯大工ですが上位5パーセントに入るのが目標である。
先の歯科医とは違う、ある歯科医のブログ記事で『歯大工はという言葉は大工に失礼だ』という意見を見つけたときは、うれしかったと覚えている。記事を読んで、その方はインプラントの世界では有名な方であると判明した時は尚更嬉しかったと記憶している。
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