驕れる矯正専門医
結論
矯正専門医の中には心無い方がいます。骨格性下顎前突の女の子にしなくてよい抜歯をして、意図的に骨格性下顎前突を重症化させて外科矯正へ誘導しようとしている矯正専門医がいた。というお話です。
この患者さんは13歳の女の子で、他院(矯正専門医)のところで小学4年生から矯正治療をしていました。2年ほどして、いったん終了ということで装置を外しています。写真を見てわかる通り下顎が前へ出て、上顎が小さい、いわゆる骨格性下顎前突です。前医が言うにはこれから先外科矯正になるかもしれない。とのことです。
患者の親は娘を外科矯正をさせたくないので2年間治療をしたのでした。それなのに『外科矯正が必要かもしれない』との説明があり、その説明に、『今までやってきたことは無駄だったのですか?』と、憤ていたそうです。
実は、憤った理由は、親が不満に思う、今までやってきたことは無駄だったのか?だけではなく、専門医が知らない事実があります。このことに関して以下に説明をします。
前医の治療
患者は下顎の左右中切歯が先天性欠如です。上顎は左右5番が先天性欠如です。そして、骨格性下顎前突症です。
問題なのは前医の治療です。骨格性下顎前突で上顎左右5番が先天性欠如であるのに、上顎の両側Eを抜歯しているます。
上顎左右5番の先天性欠如とは、上顎左右Eの下には5番がある筈なのに無いことです。Eが存在することで5番が生えてくるスペースを確保しています。成長期にEを抜歯すれば、その下に5番がなければ確実に顎が小さくなります。このことに関して説明を加えます。
とても大切なこと
以下の生物学的原則があります。(とても大切なことで、日矯の認定医なら皆さんご存知な筈です。)
成長期で歯牙の欠損があると、欠損のある顎が確実に小さくなる。
従ってこの原則を根拠に成長期の顎性の問題(骨格性の下顎前突)を抜歯によって改善させることが可能です。
例えば、骨格性下顎前突に於いて、早期に下顎小臼歯の抜歯をすることで骨格性下顎前突を改善させてその後ブラケットとワイヤーの通常の装置で下顎前突の治療を終えることが可能です。このようにすれば、成長が止まってから矯正治療を始める場合と違い、顎性の改善が期待できます。
この患者の場合
この患者において下顎の中切歯が先天性の欠如であることは抜歯をしたのと同じで、下顎を小さくなります。下顎前突の治療としては有効に作用します。
ところが、この患者のように、混合歯列期後期に上顎の両側Eを抜歯することはEの後継歯牙が存在しないのであれば、確実に上顎を小さくする行為になります。骨格性下顎前突においてはそのような行為は、下顎前突の改善にはなりません。悪化になります。矯正専門医は矯正の常識として成長期の顎と歯牙の関係を知らない筈がありません。
ですから、意図的に外科矯正へ誘導しようとしていると思われても仕方がありません。なんせ、外科矯正は保険がきいて点数が高い、いわゆる儲かる治療です。
まとめ
この患者を手掛けた矯正専門医は、患者は素人だからわからないだろうと思っていたのでしょうか?
実は患者の親は知っていました。この治療はおかしいと他の歯科医からも言われています。私もおかしいと説明しました。患者が他の歯科医院へ意見を求めても一般開業医は知らないから大丈夫と高をくくっていたのでしょうか。私の知り合いの一般開業医にも知っている先生は沢山います。
この患者に行ったような、意図的に外科矯正に誘導しようとする矯正専門医はいつか足元をすくわれることになるでしょう。
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